



今は、書の名品の多くを影印本という形で入手できるが、昔はそんなものはないので、拓本や肉筆を借りて、それを双鉤に取り自分の手本としたのだ。いわば、自分で手本を作っているようなものだから、模写のしかたも、いきおい真剣なものになったことだろう。 双鉤していると、微妙にずれることもあるが「まあいいか」で済ませてしまうことも多い。手本が手に入りにくかった昔の方が、学ぶことに貪欲になれたのではないかと思う。
今回も王福庵の印影の模写を添えた。印文は「有好都能累此生」(好む有らば都べて能く此の生を累はす)である。これも、鄧石如に同文の印がある。文字の線に対し、辺縁を極端に太くした古璽風を基調としながら、三角形の筆画を多用し、シャレた印になっている。西泠八家のうち、巧緻な印風で知られた、趙之チン(深の偏を王に)に倣ったものだろう。
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